1991年 122ページ
日本語版 序
近年のライフスタイルの多様化、 生涯教育の重視に伴い、 楽しみとして篆刻 に取り組む人が増加しているといわれる。 しかもそれには、従来の考え方に縛 られず、自由に楽しみながら、マイペースで学びたいとの傾向が強いようであ る。
翻ってこの人々にとって共通の悩みのひとつは、現代人が過剰ともいえる情 報量の中で、真の情報を見失いがちであるのと同様に、氾濫する出版物・講座・ テレビ 通信教育などの中から、自分に最適なものをいかに選択するかにある
と聞く。
本書は、1985年に台北で出版され、新鮮な感覚に溢れる芸術書として高い 評価を受けた王北岳 『篆刻芸術』 の日本語版である。 従来の篆刻指導書がとかく 歴史偏重、 技法偏重に陥り、 表現 用語も難解な面が多く、その傾向をさらに 強めていた原因が、 決定的に不足していた図版にあった中で、 本書は新しい研 究に基づき、 起源・歴史・技法 印材 印文印人など篆刻理解に必要な諸要 素に多面的に触れながら、 現代の芸術入門書に必須の豊富なカラー図版を駆使 し、楽しみながら篆刻を学ぶことができるように構成されている。 この一冊が 手元にあれば、 篆刻に関する幅広い知識が得られる、 正に現代人のための座右 の篆刻入門書といえる。
中国を代表する篆刻家のひとりである王北岳先生の著書が、広く日本の篆刻 を楽しむ人々に迎えられ、 江湖に益すること大ならんことを願う次第である。 なお、日本語版の用語・表記については、平安印社主幹竹本大亀先生の御指 導を仰いだが、 より多くの読者の御教示を賜れば幸である。
1990年12月
同朋舎出版編集部
表紙小傷、小汚れ、薄い折れ線。背表紙やや色あせ。もちろん読む分には問題ありません。
なお細部に至るまではチェックしきれない場合がありますので、書き込み・線引き・記名・蔵書印・値札等ある場合があります。ご理解の上、ご購入下さい。