心理療法家と旅するこころのワンダーランド! 日常の目に見える現実とは異なる次元の現実を描く村上春樹の作品群と、 こころに深い苦しみを抱えつつも自らの物語を生きていこうとする クライエントへの心理療法の事例を重ね合わせながら、 激しく揺れ動く「思春期」の実像を鮮やかに描き出し、 人が生きるということそのものの意味を問いかける。 心理療法家がこころの本質に迫った定評あるロングセラーに、 近年の村上作品を取り上げた論考を新たに加えた増補版。 解説=三浦しをん氏。 「物語の筋をただ楽しむというには、あまりにも構造が複雑で、 日常と異なった次元からもう一度日常を照射しなおすような厳しさを 持っている村上春樹の作品が、これほど多くの人々に読まれているのは どういうことなのだろう。それは、読み手が意識しているかどうかは別として、 日常と異なった次元とかかわることが今の時代を生きる上で 切実に求められているからではないだろうか。」(本文より) ◆目次 第一章 物語の力 物語の呪縛 新たな物語のプロローグ 第二章 思春期という異界 異界の視点 思春期同窓会 第三章 思春期体験と死 死の側面とつながる 生の中にある死 第四章 現実の多層性 「見える身体」と「見えない身体」 羊男の世界 「入り口の石」 イメージの力 「向こう側」から来る性と暴力 一夜の出来事~『アフターダーク』から 第五章 本当の物語を生きる 物語の共有 全体性を取り戻す 物語の行方 補論 十歳を生きるということ――封印された十歳の印としてのふかえり 思春期への巡礼がもたらすもの 十四歳という人生の独立器官 解説 物語の効用 三浦しをん ◆本書で引用・参照している村上春樹の作品(刊行年順) 『羊をめぐる冒険』 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 『ノルウェイの森』(上・下) 『ダンス・ダンス・ダンス』(上・下) 『国境の南、太陽の西』 『ねじまき鳥クロニクル―第1部 泥棒かささぎ編』 『ねじまき鳥クロニクル―第2部 予言する鳥編』 『ねじまき鳥クロニクル―第3部 鳥刺し男編』 『スプートニクの恋人』 『海辺のカフカ』(上・下) 『アフターダーク』 『1Q84―BOOK1〈4月―6月〉』 『1Q84―BOOK2〈7月―9月〉』 『1Q84―BOOK3〈10月―12月〉』 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 『女のいない男たち』