紫がかった不透明な青色の胎に、巻いた線跡が多数胎の上から下まで残された丸玉で、アジアで入手のオランダ製と説明されました。穿孔面の片方の孔は、角ばった円形で小さく、もう1つの孔は大きく、とくに多数の巻き線跡が見られ、芯軸から胎を外すため押し上げた跡の切れ(凹み)みも見られます(6-7枚め)。History of Beads 付表では。1700-1800年頃のオランダの欄に、巻製法の跡が残る青い胎で、巻いた跡か白い横線紋の丸玉や楕円玉(129-130番)が掲載されています。
有名なオランダ製の青い丸玉、ドゴンの青ビーズは、コバルトを着色剤に使用したクリアな深い瑠璃色で鮮やかな濃紺が輝き、巻き製法で制作の胎には巻き線が見られます。
ベネチア人のガラス職人が、アムステルダムに17世紀初めに移住してビーズ工房を設け、オランダのビーズ製作に大きな影響を与えました。ドゴン・ビーズは、1700年代から、19C初期を経て前半にオランダで制作され、1800年頃には不透明な水色や白の丸玉も制作されました。
本品は、クリアで丁寧な制作の1800年頃のオランダ・ビーズに比較し、孔の周りに巻き線が多く孔も不規則な形状と押上げた跡の切れが見られます。オランダ・ビーズは、1602年設立のオランダ東インド会社とともにオランダ商人がアジアに到来し、ジャワなどに流入し、19C後半から20C初めにも、ジャワや東南アジアの他地域への流入は続きました。
本品の巻き線跡や孔の不規則性から推測し、オランダ製と判断するには、19C後半から20C初めのオランダで制作された、不規則な青玉の類例が確認できるかに拠ります。オランダ玉を模したアジアで制作との判断は、実際、中国では設備の整わない地方のビーズ工房が制作した類例が確認できるため。これら工房でこうした不規則ビーズが制作された可能性は高いと見なせます。
巻き線跡が本品に概略的に類似し、孔周りに切れ(凹み)のある、中国製ビーズが、アジア山岳地域の住民との交易に使用された類例もあり、オランダ製よりは1850-1900年代に制作の中国製と見なせば。本品の不規則性も納得できそうです。少なくとも、紫がかった青が美しい本品は、オランダとアジアにおけるビーズ制作事情を知る手掛かりとなる、興味深いビーズです。
サイズ 高さ約17㍉ 幅 約16㍉ 孔径 約4㍉