若手の短編作家として輝かしい成功をおさめていた30歳の著者パオロ・コニエッティ。
彼はあらゆる賞にノミネートされながらも、突如スランプに見舞われました。
彼にとって「書けない」のは、「眠らない」とか「食べない」というのと同じであり、生まれてこのかた一度も経験したことのない虚無感と苦しさです。
本書は、そんな中で彼がかつて慣れ親しんだ山での生活へ戻ることを決意し、そこで自分を見つめ直す過程を描いています。
『知っている語彙では自分の思いを表現しきれなかった』と気づき、『自分のことを語っている言葉を探すために貪るように本を読んだ』という一節が、強く心に刺さって私の中に残っています。
私自身、日常の中で自分の感情を的確に言葉にできないもどかしさを感じることが多くあります。
だからこそ、本を読んで「これが私の言葉だ!」と心に響く表現に出会えた瞬間、言葉の力に深く感動することが多いです。
今は、インターネットを使えば、無数の言葉や表現に触れられます。
それにも関わらず、自分を表現する言葉は、かえって枯渇していくような感覚があります。だからこそ、この言葉に、この本には強く惹かれました◎
本書は単なる自伝ではなく、自分を見失いがちな現代社会の中で、私たちに「どう生きるべきか」を静かに問いかけてくれます。
それは、ただ「外の世界」を追い求めるのではなく、「自分の心と向き合う」ことの大切さに気付かせてくれるものです。
自分自身を、少しずつ許すことができるような、心が軽くなるような気持ちになりました。
爽やかな読み心地と、美しい言葉たちに、読後も山の静けさが心に残ります。
一読しただけですので、状態は良好だと思います。
「フォンターネ 山小屋の生活」
パオロ・コニェッティ / 関口 英子
定価: -
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