長期自宅保管となりますが、写真のように保存は比較的良好です。ご了承いただけるかた宜しくお願い致します。
他の商品と同時購入希望の方は送料が節約できる場合、割引ができることがあります。その場合は購入に進む前にコメントください。
天使に見捨てられた夜
女私立探偵・ミロは、フェミニスト・渡辺の依頼を受けて失踪したAV女優・一色リナの捜索依頼を受けます。どうやらリナが出たAVの実態はレイプそのもので、被害者であるリナを救おうという思惑です。AV業界を探るので女探偵には荷の重い仕事で、予想通りAV男優たちに強姦されそうになったり、嫌がらせをされたり…。更に敵役と目されるAVプロダクションの社長・矢代の肉体にあこがれ、身を任せたりと、「女」を捨てきれず自己嫌悪に陥る姿が生々しく描かれます。そんな中、往年のスターミュージシャン・トミーが惨殺される事件で世間は騒ぎます。そしてその棺の中に入れられた小さな赤い壺。それは失踪したリナの部屋に残された「雨の化石」が入れられた壺と同じもので、リサとトミーの関係を伺わせる伏線になっています。
次には依頼主である渡辺が殺されるに至り、事件は混迷度を深めるのです。登場人物が全員不幸を背負っているという稀有な秀作です。
東京島(ハードカバー)
南海の無人島「トウキョウ」に漂着した32人のうち女性は清子一人。当初「トウキョウ」と「ホンコン」の2地区に分かれて住んでいた漂着民。脱出不可能の絶望の島で中年デブの清子は最強の武器「性」を駆使してトウキョウの女王にのし上がっていく。そんななか「トーカイムラ」で一人生活する嫌われ者のワタナベだけが、島に産業廃棄物を不法投棄に来たやくざに助けられ島を脱出する。清子の妊娠と出産、フィリピンダンサーたちの追加の漂着、など後半は女性の強さを強調する女神伝説となっているが、清子と娘のチキだけ東京(日本)に帰り着くのに女神のいなくなったトウキョウ島が繁栄していくラストは逆説的でこれも面白い。
相変わらず心の深淵をあぶりださせれば桐野夏生は天才的。清子の逞しくも崇高なあきらめ感と適応能力に比して男たちの矮小ともいえる卑屈さ、虚弱さは生物学的な女性の優位性を見事に描き出している。
初代清子の夫の日記から「死ぬ前にヤマザキの厚切り食パンを食べたいという」は泣かせるほど上手い文明批評になっている。