ブルックナー
交響曲第3番ニ短調『ワーグナー』
指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ
ウィーン・フィルハーモニー管
録音:1954年
クナによるブルックナーのデッカ録音は第3~5番の3曲のみ。3曲とも「改悪」と言われている「改訂版」を使用しているが(3番は原典版とほとんど同じ)、演奏があまりにも素晴らしいので聴き進むうちに気にならなくなってくる。とにかく、これほど広々とした音空間と瑞々しい響きを持ったブルックナーは他には全く存在しない。
音楽評論家:宇野功芳氏
「1954年のモノーラル録音だが、音質はきわめてみずみずしく、よほどのオーディオ・マニアでないかぎり、十二分に満足できよう。演奏はとくに第一、第二楽章が優れており、これを凌ぐCDは今後といえどもまず現れまい。その理由の半分は古き佳き時代の香りをぞんぶんに残したウィーン・フィルの魅力にある。すなわち、すべてのパートに人間の心が乗り移っており、それが独特の高貴な音色に100%表われているからである。どの一部分をとっても《楽器の音》がまったくしないのにおどろかされる。金管の強奏でさえそうなのだ。こんなオーケストラ演奏はたとえウィーン・フィルであっても現在では到底不可能であろう。いや、当時といえどもクナッパーツブッシュの指揮だからこそ、こんなひびきが出し得たのだ。」
もしも彼の実演で聴けていたらと、想像するだけで身震いするほどのうねりと音の厚み。一見あっさりと流される第1楽章の深み。コーダの猛烈なアッチェレランド!個性を封じ、自然かつ豊かな詩情を感じさせる第2楽章アダージョ。素朴な第3楽章スケルツォのトリオ。いずれもブルックナーを聴く愉しみを喚起するものだが、やはり極めつけは終楽章だろう。ゆっくり歩みを始める冒頭の、何て魅力的な宇宙的音楽。そして激しく動く、前のめりのコーダの何て人間的な音!
『驚くべきことに、クナッパーツブッシュは最小の身振りとその魅力ある人格によって、舞台とオーケストラ共にほとんど労せずして導くことができました。また全く独特で個性的な、真似のできない解釈によって、作品を完璧に演奏することができたのです。』~フランツ・ブラウン著・野口剛夫編訳「クナッパーツブッシュの想い出」(芸術現代社)
国内盤、帯無し、盤面傷無し 13
プラケース少しすれあり
*まとめ買い値引きします(要事前コメント)