☆ 『ある夢想者の肖像』　スティーヴン・ミルハウザー 著　柴田元幸 訳　白水社

☆. 『ある夢想者の肖像』 スティーヴン・ミルハウザー 著 柴田元幸 訳 440ページ 白水社 ♦︎良好な状態です ミルハウザー初期傑作長篇、待望の邦訳！ 少年が微睡みのなかで見る、終わりのない夢……思春期の生の瞬間、その息づかいを濃密に伝える。 「そして僕はかつてどれだけ二千ピースのパズルに焦がれたことか、一万ピースのパズルに、一部屋の床全体を覆う百万ピースのパズルに、地下室全体を……裏庭全体を……かつて僕は町全体と同じ大きさのパズルの中のパズルを夢見たのだった、草のピースで草を覆い、歩道のピースで歩道を覆い、絨毯のピースとリノリウムのピースですべての家の部屋の床を覆い、屋根のピースで屋根を覆い、公園のピースで公園を覆い、丘のピースで丘を覆い……海のピースで海の底を覆い……けれど僕の前にあるパズルは小さなテーブルさえ覆えず……」 舞台は1950年代のアメリカ、コネチカットの町、主人公の少年アーサーは、周囲の世界に潜んでいる驚異に魅惑されながらも、凡庸な日常に退屈して暮らしている。ポーの心酔者フィリップ、鉱石集めやボードゲームに熱中するウィリアム、不登校で人形や玩具を集めた部屋で過ごす少女エリナーという三人の「同好の士」がいる。 ある日、アーサーがいつものようにエリナーの部屋を訪れると、窓が開け放たれ、陽光が差し込み、腕まくり姿のエリナーを目にする……。 　微熱を病む少年が微睡みがちのなかで見る「白昼夢」のような作品。中篇や短篇を特徴づける職人芸的な緻密さに貫かれた文章とは違い、「死」の影が全編を覆う。微に入り細を穿った、重厚で反復の多い文体は、思春期の生の瞬間を濃密に伝える。 作家ミルハウザーは『マーティン・ドレスラーの夢』でピュリツァー賞を受賞した、現代アメリカ文学を代表する重鎮。本書は、ミルハウザーの全作品のなかでも、作家の神髄が見事に示された傑作長篇。 ［原題］Portrait of a Romantic ☆. 気に入っていただけると思います この機会にぜひ ポール・オースター スチュアート・ダイベック スティーヴ・エリクソン レベッカ・ブラウン バリー・ユアグロー トマス・ピンチョン マーク・トウェイン ジャック・ロンドン