カール・ハインリヒ・グラウン/オラトリオ「イエスの死」
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ジギスヴァルト・クイケン(指揮)/ラ・プティット・バンド、エクス・テンポーレ ウタ・シュヴァーベ(ソプラノ)、インゲ・ファン・デ・ケルクホーフェ(ソプラノ) クリストフ・ゲンツ(テノール)、シュテファン・ゲンツ(バス) 録音:2003年3月31日4月1-2日、ベルギー、ブルージュ、コンセルトヘボウ HYPERION【イギリス輸入盤】 18世紀ドイツを代表する作曲家の一人、カール・ハインリヒ・グラウン(1704?1759)の代表的な宗教作品オラトリオ「イエスの死」のアルバム。グラウンはJ・S・バッハより若い世代に属し、ドレスデンで音楽を学んだ後、ブラウンシュヴァイク宮廷を経てプロイセン王フリードリヒ2世の宮廷楽長として活躍しました。オペラ作曲家として名声を得る一方、宗教音楽にも優れた作品を残しました。「イエスの死」は、1755年3月にベルリン大聖堂で初演され、その後ドイツ各地で繰り返し演奏される人気作品となりました。ベルリンでは復活祭前の聖金曜日に毎年のように演奏され、19世紀後半まで長くレパートリーに残ったほどです。 J・S・バッハの「マタイ受難曲」や「ヨハネ受難曲」とは異なり、聖書本文をそのまま物語として再現するのではなく、キリストの受難を前にした人間の感情や内面を中心に描いているのが大きな特徴です。詩人カール・ヴィルヘルム・ラムラーの台本は啓蒙時代の「感情主義」を背景としており、苦悩、祈り、悲しみ、希望といった感情が、レチタティーヴォ、アリア、合唱、コラールによって非常に直接的に表現されます。 音楽はバッハほど劇的・重厚ではなく、むしろ明快で流麗な旋律と洗練された和声が印象的。特に独唱アリアには、グラウンがオペラ作曲家として培った豊かな声楽的感覚が生かされており、宗教作品でありながら非常に親しみやすい美しさを備えています。一方で、受難の場面では繊細な和声と緊張感のあるレチタティーヴォが深い精神性を生み出します。 古楽演奏の第一人者ジギスヴァルト・クイケンとラ・プティット・バンドとエクス・テンポーレによる演奏も期待通りの洗練されたもの。2003年にブルージュで録音されたHyperion盤で、独唱にはウタ・シュヴァーベ、インゲ・ファン・デ・ケルクホーフェ、クリストフ・ゲンツ、シュテファン・ゲンツらが参加しています。 クイケンは、グラウンの音楽を過度に重く扱うことなく、透明な響きと細やかな表情によって、その優雅さと内面的な深さを見事に引き出しています。J・S・バッハの受難曲とはまた違った18世紀ドイツにおける「感情の音楽」の魅力を味わえるアルバムです。バロック宗教音楽の愛好家はもちろん、バッハ以外の受難曲やオラトリオを探している方にもぜひお薦めしたい名盤です。新品です。