イスラム教の論理
新潮新書
飯山 陽 著
神の啓示の言葉を集めたコーランによれば、異教徒は抹殺すべき対象である。彼らを奴隷化することも間違っていない。ジハードは最高の倫理的振る舞いである。その意味で、カリフ制を宣言し、シャリア(イスラム法)によって統治し、ジハードに邁進する「イスラム国」は、イスラム教の論理で見れば「正しい」のだ──。気鋭のイスラム思想研究者が、コーランを典拠に西側の倫理とはかけ離れた「イスラム教の本当の姿」を描く。
具体的で本質をついているので説得力があり、価値観の違いについて冷静に記された良書。的確に明解に分かりやすく説明されており、非常に読みやすい。一方、原理主義礼賛や改宗者のイスラム離脱を許さない原則を説き、人権問題や内部改革の困難な点は否めない。
信仰は適当である点や自己都合の解釈がまかり通り、実際の信徒にとってコーランは絶対ではないことを明かす。
ISIL等の過激派によるジハードがコーラン原理主義の発露だとして、これを現代の倫理で否定はしないのが本書。しかし、何も知ろうとせずに批評することは恥ずかしい。総体的には腑に落ちなかった点がスッキリする良書。
本書はイスラームの概要をありのままに取りまとめることを目的とする。これは仏教や神道等との比較に欠かせない利点だ。特性を理解して読めば、目が拓かれるだろう。
著者
1976(昭和五十一)年東京生まれ。イスラム思想研究者。アラビア語通訳。上智大学アジア文化研究所客員所員。上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野単位取得退学。博士(東京大学)。現在はメディア向けに中東情勢やイスラムに関係する世界情勢のモニタリング、リサーチなどを請け負いつつ、調査・研究を続けている。本書が初の著作。
新潮社 (2018年刊行)
新書全240頁
定価 858円
帯付き。専用しおり付き。新品同様。